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[ 2008/11/23 02:20 ] | トラックバック(-) | コメント(-)

おかあさん 

絆〜Pieces〜 No.22

しばらく帰ってなかった自宅に、
久々に帰る日がきた。

施設での生活は、すごくラクだった。
車椅子で動くのに苦労はしないし、
トイレも苦労なく使うことが出来る。
ベッドも電動のベッドだった。

手の自由が少なくても、誤魔化せた。

だけど、自宅はと言えば。
まだ段差もあるし、トイレも入れない。
ベッドも普通のベッドだったし、
ベッドマットも普通のものだった。

そう、ベッドマット。

ベッドマットひとつで、眠りが変わる。
感覚がなく、動かないカラダは、
寝返りを自由にうつことが出来ないから。
硬いベッドマットで熟睡をしたら、
背中の皮膚が、死んでしまうこともある。
いわゆる、床ずれ。褥瘡(じょくそう)

それを防止するために、あたしは。
毎晩、3時間おきには目覚めるよう、
毎日心がけていたのだけど。
自宅の普通のベッドマットの場合、
2時間も寝たら、お尻や踵が赤くなってしまう。

動くことの自由に加えて、
睡眠の自由までも、少なくなる。

あたしは、自宅に帰るのが怖かった。

本当は安らげるはずの場所。
生まれ育った、場所。
大切な家族がいる、場所。

それなのに。帰るのが怖かった。

不自由だから。
まだ、バリアフリーにしてないから。

・・・それだけじゃない。

手の自由がきかなくなっている様を、
家族たちに見せることが、怖かった。

あたしを生んでくれた、お母さん。
決してイイコではなかったあたしを、
それでも大切に育ててくれた、お母さん。

あたしのカラダが動かなくなって。
受け入れきれずに、苦しんでいたのは、
あたしだけじゃなくて、お母さんも一緒だった。

諦めなければ治るよ と。
何度も何度も、言っていたお母さん。

早く治してくれないと困るんだから と。
そう言いながら、車椅子を押してくれた、お母さん。

そんな、お母さんに。
手の不自由さを見せたくなかった。

自宅に帰る、数日前だったと思う。

いつものように、食堂で昼食を食べるとき。
辛うじて握るようにして使っていた箸が、
とうとう、使えなくなっていたんだ。

目の前には、だいすけがいた。

席の並びが変わって、あたしの前は、
偶然か必然か、だいすけになっていて。
そんな些細な、食事の時間が一緒だということが、
すごく、嬉しくて幸せで。
優しい時間のように、感じていた頃。

だいすけの目の前で、あたしの手から。

箸が、こぼれ落ちた。

あの瞬間の、だいすけの表情も。
赤い箸の毒々しさも。
イヤというほどに、脳裏に焼きついている。

その日から、箸を見ることさえも、
本当はイヤだと思うくらい。
フォークやスプーンが忌々しいと思うくらい。

自分の病状の進行具合に、
嫌気もさしていた。

そんな状態で、自宅に帰ること。
お母さんに、会うこと。
食事を一緒に、するということ。

すべてが、怖くてたまらなかった。

そして、何より。

お母さんに、申し訳なく思えて仕方なかった。

だけど、病状の進行のように。
時間は、待ってはくれない。

意を決して帰った自宅には。

少しだけ、疲れたような、お母さんがいた。

それでも、おかえり、と言って。
少しだけ笑ってくれたから。
あたしも、ただいま、と言って。
いつものように、笑ったんだ。

トイレに入れないだろうから、と。
尿瓶を用意してくれていた、お母さん。

本当なら、お母さんが年を取って。
介護が必要になったとき、あたしが。
用意すべきだったであろう、尿瓶。
それが、今、あたしの部屋にある。

何もかもが、物悲しい色に見えた。

食事の準備をしてくれたとき。

ごめんね。フォーク、使うから。

そう言って、箸を返すあたしの手を。
お母さんは、震えるような瞳で見つめてた。

もう、すべてが、限界だったのかもしれない。

その日の夜、だったと思う。

お母さんが、あたしに言った。

「アンタが諦めるから、歩けないのよ!」

心からの言葉でもあって、
だけど、本心ではない言葉だっただろう。

また、娘が歩けると信じたい。
いい意味で諦めなきゃいけない。
また、歩けるようになって欲しい。
歩けない娘も、受け止めなきゃいけない。

そんな、葛藤が、あったんだと思う。

わかってた。あたし、わかってたよ。

だけど、そのときの、あたしは。

じゃあ、歩き方教えてよ!
生まれてきたときみたいに、
ハイハイから順番に教えてみてよ!
動かないんだよ!感じないんだよ!
諦めなきゃ、前にも進まねぇんだよ!!

そう、泣きながら、喚いてしまったんだ。

苦しかったんだ。
お母さんが、真っ直ぐ。
あたしを見てくれないことが。

苦しかったんだ。
お母さんが、あたし以上に。
悩み苦しんで疲れていることが。

苦しかったんだ。

あたし、自身が。

お母さんの苦しみをわかってるクセに。
お母さんの苦しみをわかってるフリで。

自分の苦しみを消したいがためだけに、
吐いたような、捨てゼリフ。

言ってから後悔しても、遅いのに。
後悔に後悔を重ねて、あたしは。

ごめん、ごめんね、ママ。

そう、心の中で呟くしか、
そのときは、出来ずにいた。
素直に、声に出して言うことが、
出来ずに、いた。

そんな状態のまま、
あたしの自宅生活は幕を下ろして。
お母さんに見送られながら、
あたしは、施設へと、帰った。

数日後。

いつも通りの、喫煙所での時間に。
お母さんから、電話がきた。

「そんなカラダに生んで、ごめんね」

あたしは、言葉が出なかった。

違う、違うんだよ、ママ。
あたしの、今の不自由なカラダは、
生まれつきじゃ、ないんだよ。
だから、ママは、何にも悪くないんだよ。

誰一人として、悪い人なんか、いないんだよ。

・・・悪いとしたら。

あの日、安らぐはずの自宅に帰って。
必死に、もがいてた、ママに向かって。
苦しみだらけの言葉をぶつけた、
あたし、なんだよ。

今までの人生。
決して、本当に、イイコじゃなかった。
だけど、このときほど。

こんな娘で、ごめんなさい と。

心から思ったことは、ありません。

それから、しばらくして。
自宅の近所に住むイトコから、
一本の電話が、入ったんだ。

「オバちゃん、鬱病になっちゃった」

お母さんを、最後の最後に、追い詰めたのは。

紛れもなく、あたし、だった。

〜続く〜

ポチッとな。 まだ登録されてたらしいよ。 登録人数でキリ番踏んだ。 人気ブログランキング【ブログの殿堂】
↑クリックして貰えたら、歯食いしばって頑張ります!
[ 2008/07/01 23:23 ] | TB(0) | CM(3)
Feel the rhythm!
Feel the rhyme!
Get on up!
Let's!
Set your heart free!

Cool Running!!
[ 2008/07/01 23:43 ] Mifrino.Frasnicov [ 編集 ]
2006.10まで遡って挫けた。

が、7/2も更新するように。
やれば出来る爆乳乙女(二十歳って)さまへ

てなことを流金のスットコドッコイがほざきやがっていましたぜ。フェッ、フェッ

今すぐギュッて抱きしめたい
本音ですぜ
[ 2008/07/02 15:50 ] 普通の人 [ 編集 ]
みふりのふサン
Cool Running!!

普通の人サン
すげぇ。遡りすげぇ。
挫けた←読めない。
気合いれときまーっす。
[ 2008/07/02 20:38 ] 井上まき [ 編集 ]
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