絆〜Pieces〜 No.20
手の自由が制限されて、
あたしは、伸ばした髪の毛を切った。
腰まで伸びた、身の毛を。
あたしは、ショートカットにした。
真剣に、変わったことについて、
あたしは考える夜が続いていた。
脚が動かないこと、感覚がないこと。
座ってる感覚もないからバランスが取りづらいこと。
体温調節がきかないから、熱がこもること。
逆に、冷えたら冷えっぱなし。
感覚のない部分は汗がでない。
ケガをしたら、治りが悪い。
感覚がない分、ぶつけても気付くことができない。
いわゆる床ずれ、褥瘡(じょくそう)が出来たらタイヘン。
ひどければ、数ヶ月の入院生活となる。
靴を履くのがめんどくさい。
履けない靴も、ある。
大好きだったハイヒール。
つま先の開いたオサレなサンダル。
怪我を覚悟で履くしかない。
履くことが、なかなか出来ない。
足の指は時々折れる。
折れても放置するしかない。
ついでに痛くない。
腹筋も背筋もなくなったから、
ベッドから起き上がるのに時間がかかる。
時々起き上がれない。
寝返りすら、うまく出来ない。
トイレの感覚もないから、
自分でカテーテルを使わないと出せない。
血圧がすぐ下がる。
貧血で真っ白になる。
咳もくしゃみも、うまくできない。
飲み込みが悪いから、
すぐ喉にものを詰まらせる。
握力がないから、ペットボトルは開かない。
開けるときは、口を使う。
何かを開ける、破るという動作は基本的に口。
ライターも使える種類、使えない種類がある。
洋服がうまくたためない。
着替えも遅くてヘタ。
化粧も遅くてヘタ。
あ。それは前からか。
爪がよく割れるから、マニュキュアが出来ない。
つけ爪も危ない。
顔がうまく洗えない。
歯ブラシもうまく出来ない。
ものをすぐ落とす。
手のカタチが不自然。
お風呂で洗うのは、どれを取ってもタイヘン。
だから、伸びた髪も切った。
鼻がうまくかめない。
あ。それも前からかも。
肺活量がないらしい。
歌を歌うと血圧が下がるのと、
息が続かないのと、
音がうまくとれなくなった。
腹から声なんて、でない。
ピアスもネックレスも自力はムリ。
あ、ピアスはなんとかできるときがある。
爪は自分で切れない。
肩があがらない。
服も、考えないと着れない。
試着室なんか、使えない。
お店も自由に入れない。
トイレを考えなきゃいけない。
行きたい場所に、なかなか行けない。
車椅子がないと、動けない。
視界が、大きく変わった。
見える景色が、違う。
あげだしたらキリがないんだ。
わかってた。
たぶん、まだまだあげきれない。
それだけ、生活が変わった。
そして、こうなって出来ること。
毎日、みんなの優しさを素直に感謝出来ること。
小さな発見を、大きく喜ぶことが出来ること。
人に、優しくなれたこと。
ひとりで生きていけない分、
誰かに寄り添って生きるしかない分。
ひとを、大切に、大切に、想えること。
失ったものは、大きいけれど。
得たものも、大きいんだということ。
今、だからこそ言えることもある。
あの頃。手の自由が制限され始めた、
あの、施設で過ごした、大切な時間。
あの時には、気付くことができなかったこと。
今、だからこそ、言えること。
リアルタイムに、先日から。
あの頃と同じように。
・・・あの頃、以上に。
手の自由が、また、制限された。
あの頃、初めて手の自由が制限された、
あの頃に書いた手記をそのまま、
そして、それに今の気持ちを少しだけプラスして。
絆〜Pieces〜No.20とさせて頂きました。
あの頃は、出来なくなったことの大きさに、
負けそうになる毎日でした。
今も、同じように、負けそうになるけれど。
みんながいるから、頑張れる。
仲間・・・友達、家族、親戚。
そして、これを読んでくれている、みんな。
ありがとう。
本っっ当に、ありがとう。
〜続く〜

↑キリのいいNo.20だったので、感謝の気持ちを添えました。